ベンチャー企業の雄が共に語り合う 「浜松の福祉の今、そしてこれから」 シリーズ 第3回

対談・取材

浜松市で今、もっとも勢いのあると言われる福祉の企業、「ヒーリングハート」と「咲夢来」。その代表である金島隆裕氏と齊藤良尚氏に、なぜ福祉事業に参入したのか、その理由や福祉の現場の今、そして今後の展望について、存分に語り合っていただいた。
(2019年1月実施)

●株式会社ヒーリングハート 代表取締役 金島隆裕

●合同会社咲夢来 代表取締役 齊藤良尚

第2回では、齋藤さんと金島さんに、障がい者の方に対する”知見”や”経験”を率直に語っていただきました。
第3回(最終回)では福祉事業、そしてこの先の未来についてお話しいただきます。

————先ほど、齋藤さんは最初から「福祉」を意識したわけではないと伺いましたが、齋藤さんにとって「福祉事業」とは、大きな意味での「サービス業」だったのでしょうか?
齊藤:そうですね。人が好きというか、喜んでもらえたり、笑顔を見ることができたりするのが自分の喜びにもなりました。
 以前、寝たきりの男の子から電話をもらったことがありました。単純な送迎かと思って行ったら、食事や排泄の介助を頼まれまして……。彼は、今思うと知的障がい者だったんですが、僕にはそのとき知識がなかったから、「なぜ車イスの送迎をしている自分にこれを頼んだんだろう?」と不思議に思いました。

金島:彼らの基準と、僕らの基準が違うことって、多々ありますよね。

齊藤:そうなんです。金島さんが先ほどおっしゃったとおり、いろいろな子と出会い、経験を積むことで、相手の望むことが分かってきました。
 そういえば、長野のパラリンピックのときには、送迎ボランティアとして、10何名かで現地に行き、車イスの方を宿泊施設から会場まで送迎するお手伝いをしました。無償でしたが、国を挙げての事業に関わることができて嬉しかったです。

————金島さんにお訊きしますが、障がい者の方を雇用し、彼らの障がいと兼ね合いつつ、事業として大きく飛躍していることについて教えてください。
金島:我が社の社風で、とにかく否定をしない。相手のことを全部認めて、承認する。みんなで楽しい職場を目指しています。
 彼らに「頑張りすぎるなよ」とは、よくいいますね。もともと几帳面で頑張り屋が多いから、調子が良くなってきて「できる」となると、根をつめてやってしまう。でも、そこで頑張りすぎてショートしてしまう例も見てきましたから、「頑張りすぎるなよ」、と。彼らの家族ともよく話し、連携しています。
 先ほどお話しした「この子たちに何かしてあげたい」という最初の思いは今も変わらずあります。だから「ここは戻って来られる場所」であり、「ここにあなたの居場所はある」ということは絶えず伝えています。退職にはしません。
 障がいがあることを承知して雇い入れているわけですから。

————おふたりの「志の高さ」が伝わりました。ではこの先の、未来について考えていることを聞かせてください。
金島:精神障がい者の就労は、身体障がい者、知的障がい者に比べてとても低いのですが、僕には目標があります。
 その目標とは、技術を身につけてもらい、一般就労を目指すこと。そのために、今、技術をすごく磨いています。たぶん、うちのA型の利用者のパソコンスキルはかなりの高さです。彼らを、世の中の一般企業に橋渡しして行きたい。
 これは「就労移行支援」といいまして、支援事業に携わる全国チェーンの大手企業がいくつもあります。ただ、うちが大手とちがうところは、放課後デイなどでその子のことを昔からよく見知っているということ。昨日、今日知り合った子たちではないんです。いわば自分たちのところで育った子たちなので、良いところも知っていて、アピールポイントも分かる。パイプをつなぐことがスムーズにできると思います。
 これが目標です。
 世の経営者は、思った以上に障がいの福祉に関して興味を持っていると感じています。が、先ほどお話ししたように、障がい者に接したことがほとんどなくて、相手を知らないから、積極的に雇用に至らない。だれかが橋渡しをすればマッチングがうまくいく可能性があります。
 ぼくはきっかけを作りたいのです。そして、やるからには成果を出したいと思っています。

齊藤:まさに、訓練をする場所から、就労に移行する場所というわけですね。

金島:僕は齋藤さんが経営されている焼肉屋さん(「肉亭ゆめさく」)はとてもいいと思っています。A型の就労支援であり、それでいて、働き方は一般就労と変わらない。就労支援として、とてもいいと思います。
 うちも今、A型としては、名刺やLINEのオーダースタンプを作っています。売上の数字は知れていますが、一般の仕事という意味では非常にいいなと思っています。

齊藤:パン屋さんをされているA型事業所がありますが、僕らのところもお弁当屋さんなどができたらいいなと思っています。
 この先、僕らの焼肉屋で働く障がい者さんを見て、他の飲食店の方から「うちでも働いてほしい」とオファーが来るような状況があってもいいと思います。

金島:それはとても大事です。一般の方に働く姿を見てもらうことはとても大切だと思います。今はまだ、街中で障がい者に出会ったとき、見て見ぬ振りをしてしまう人の方が多数です。僕なんかは毎日会っているので、電車で障がいのある子たちを見かけても特に何にも思いませんけど、目を伏せてしまう人が多いのは事実。
 障がい者が働く姿を世の人に見ていただく機会は非常に重要ですよね。

齊藤:飲食は特に人の目につきやすい仕事なので、そう思います。

金島:行政がまだ追いつかない部分もあると思うので、そこは現場の我々が頑張るところかなとも思っています。

齊藤:そうですね。飲食店経営はまったく未知の新しい分野ですが頑張っていきたいです。
 また、心のバリアフリープロジェクトを通じて、たくさんの方と交流を深めていきたいですし、いろいろなチャンネル、いろいろなヒントを見つけていきたいと考えています。

————今日はおふたりとも、ありがとうございました。

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